リロノウネリ

心理学徒によるサブカルチャーから哲学まで全てにおいて読み違える試み

書評

『モモ』書評「システムの無謬性と想像力の欠如」

『モモ』に描かれる世界のシステム 幸福のために限りある時間を有効に使おうとする。その振る舞いは間違っていない。しかし人々が時間に対して過度な合理性を求めると、今度は合理的に時間を使うことが目的化されてしまう。つまり、なんのために時間を切り詰…

『紙の本は、滅びない』書評「紙の本と内田樹」

『紙の本は、滅びない』書評 『紙の本は、滅びない』というタイトルは私を惹きつけた。そのタイトルの中に、文字になっていなくとも電子書籍の脅威が見える。また、紙の本の絶滅可能性について人一倍考えているからこそ出てくるタイトルであり、どちらの側に…

『夜と霧』書評「極限状態に生きること―能動的主体の挫折―」

『夜と霧』書評 心理学徒としては『夜と霧』は読まねばなるまい。そして書かねばなるまい。というわけで今回は書評のようなものをお送りする。 『夜と霧』を読んで最初に感じるのは、フランクルという人間の温かみだ。巻末の写真や図には、見るだけで強制収…